原田マハ/暗幕のゲルニカ

  • area51
  • 2017/4/19 01:24:06

原田マハ氏の「暗幕のゲルニカ」。

かなり前に購入していながらなかなか読みおおせずにいましたが、やっと読み終わりました。



一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして2 0世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した―― 誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

もちろん小説でありますから、筆者はあっと驚く結末を用意しています。
そもそも「ゲルニカ」とは何か。
ちょっとWikiってみます。


バスク地方最古の町であり、その文化的伝統の中心であるゲルニカは、昨日午後、反乱軍空襲部隊によって完全に破壊された。戦線のはるか後方にあるこの無防備都市の爆撃は、きっかり3時間15分かかったが、その間、三機種のドイツ機、ユンカース型およびハインケル型爆撃機、ハインケル型戦闘機からなる強力な編隊は、450kgからの爆弾と、計算によれば3000個の1キロアルミニウム爆弾とを町に投下しつづけた。他方、戦闘機は屋外に避難した住民たちを機銃掃射するために、町の中心部上空に低空から進入した。…— ジョージ・スティアによる記事の冒頭部分



1937年スペインで起きた内乱の最中、フランコ軍を支持したドイツ空軍のコンドル軍団によってあまりにも非情な無差別空爆を受けた「ゲルニカ」の悲劇を知ったパブロ・ピカソは、その怒りを芸術によって現し、狂気的軍事行為を糾弾しました。
その後の絵画「ゲルニカ」についての歴史的な説明はWikiってもらえば詳しくわかります。
『暗幕のゲルニカ』は史実の間にひそむパブロ・ピカソその人の人間像や、「ゲルニカ」制作に関わった当時の愛人ドラ・マールの哀しみ、創造主ピカソを守ろうとするパリの人々を描く1930年~40年代と、2001年9月に起きた同時多発テロ事件後のニューヨークが交互に描かれます。
小説「暗幕のゲルニカ」に関しては新潮社のページに詳しい。

2003年、国連本部においてイラク空爆を発表したアメリカ政府パウエル国務長官の背後にあったのは、暗幕をかけられた『ゲルニカ』のタペストリー。そのことがこの小説の出発点であり、同時に到達点でありました。

前述通り、現代とピカソがいた時代とが交互に描かれ、しかもその中でも若干時間が遡ったりするので少々読みづらくはありますし、おそらく雑誌連載からあまり手を加えていないのか、「前回までのあらすじ」的なちょっと「クドい」部分が目につくのが玉にキズ。

それはさておき、世界を動かす芸術作品を創作することこそが芸術家の使命なのだというピカソの決意には感動を覚えます。
生半可な動機では芸術を語ってはいけない。
全身全霊を賭して(あの時代にナチス・ドイツを糾弾するがごとき「ゲルニカ」を描くことは真に命がけだったはずだ)世界に立ち向かう気概こそが真の芸術作品を生み出し、そうして生まれたものは世界を変えていく力を持ちうるのだと。
反戦の叫び、人類が繰り返そうとしている愚かな行為への警鐘。僕たちは何らかの武器を持って戦わなきゃいけないのだが、その武器は決して他者を傷つけるものであってはならない。
ピカソが「ゲルニカ」に込めた願いはそこにあるのだと思います。
そんな「ゲルニカ」をもう一度じっくりと鑑賞するために小説『暗幕のゲルニカ』は絶対に役に立ちます。


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